本年度はまずモデル基質を用いた検討を行った。o-メトキシフェノールを酸化して得られるo-ベンゾキノンモノアセタールの分子内Diels-Alder反応を用いて、ビシクロ骨格を構築した。その後得られたビシクロ化合物のケトンを水素化ホウ素ナトリウムで酸化したところ、4:1の立体選択性で還元が進行し、目的とするアルコールが主生成物として得られることが明らかとなった。この還元の選択性上昇を目指し、検討を継続している。その後、この水酸基の隣に位置するジメチルアセタールを加水分解、還元することにより、目的とするシスジオールを得た。この反応の立体選択性は先ほどの水酸基の立体化学により完全に制御されている。以上のモデル基質を用いた検討により、ビシクロ骨格を利用した、水酸基の立体制御に成功した。引き続き、実際の合成研究を進めるべく、より官能基化された化合物を合成した。エーテル結合を介して芳香環部位と側鎖(プロパルジル基)を結び、上記と同様のDiels-Alder反応を行った。その結果、切断可能な炭素-炭素結合を含む基質の合成に成功した。その後、二重結合を四酸化オスミウムを用いてジオール化し、直接の切断の足がかりとした。もう一方の二重結合を接触還元で還元したところ、立体選択的に反応が進行し、望みの化合物を得ることができた。また本化合物を用いても、モデル化合物と同様に、水酸基の立体制御に成功した。以上の知見を基に、テトロドトキシンの全合成へ向けて検討を継続している。
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