研究概要 |
天然および非天然の生物活性物質には複雑な環骨格を有する化合物が多いため、複雑な複素環骨格の効率的な合成法の開発は最重要かつ緊急の研究課題である。本研究は,環境に配慮したタンデム型閉環反応による複雑な生物活性複素環の一挙構築法の開発を目的として、アレン系化合物及びエンイン系化合物を用いた連続閉環反応を検討し、平成17年度に以下の研究成果を得た。 (1)ブロモアレンをアリルジカチオン等価体として用いた新規連続閉環反応の開発 報告者はこれまでの研究において、ブロモアレンがアリルジカチオン等価体として機能することを見出している。分子内に二つの求核部位が存在すれば,一挙に二環性化合物を合成できる可能性があると考え、今回分子内にスルファミドを有するブロモアレンを用いたタンデム型閉環反応を検討し、生物活性化合物に多く存在する環状スルファミド骨格の一挙構築に成功した(Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,1513)。 (2)試薬・触媒を用いないアレンと多重結合の環化付加反応 触媒や試薬を用いずに進行する環化付加反応は、すべての原子を有効利用するアトムエコノミーに優れた反応である。今回、アレンと多重結合間の環化付加反応を検討し、加熱のみによって縮環型シクロブタン誘導体が高収率で得られることを始めて見出した(Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,5113)。 (3)芳香族CH活性化反応を基盤としたエンイン系化合物の連続環化反応 CH結合活性化反応は、官能基化の工程を必要としないため、環境調和型反応として近年盛んに検討が行われている。今回、パラジウム触媒によるCH活性化を鍵としたエンイン系化合物の連続環化反応を検討した結果、縮環型ベンゾイソインドール誘導体が効率的に得られることを見出した(Angew.Chem.Int.Ed.2005,44,5233)。
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