研究概要 |
近年、がんの進行に血管新生が密接に関与していることが明らかになり、がん化学療法の新たなターゲットとして注目を集めている。申請者の研究室では、インドネシア産海綿より単離したbastadin類が、in vitroおよびin vivoで強力な血管新生阻害作用を有することを明らかにしている。本研究では、このbastadin類をシーズとして、合成化学的手法による新たな抗がんリード化合物の創製を目指しており、本年度はbastadin 6の各種アナログを合成して、詳細な構造活性相関を検討することで、活性発現に必要な構造単位を明らかにすることを目的に研究を行った。 まず、bastadin 6の効率的な合成法の開発を目指して検討を行い、フェノール類の新規酸化的カップリング反応を鍵工程とする、短工程、高収率での全合成を達成した(Tetrahedron,2005,61,7211)。そこで本合成法を用いて、bastadin 6の各種類縁体を合成し、構造活性相関を検討することとし、bastadin類の特徴的な構造であるオキシム基およびBr基に着目した構造変換を行い、得られた類縁体について活性評価を行った。まず、オキシム基を種々改変した類縁体では活性が大きく減弱したことから、オキシム基が活性発現に重要な役割を担っていることが明らかになった。また、bastadin 6には6つのBr基が存在するが、このBr基の数が活性発現に密接に関わっているというデータが得られた。これらの知見をもとに、化合物の水溶性の向上を目指してBr基の一部を極性官能基へ置換した類縁体の合成に成功した。また、それらの活性評価から、各種置換基の導入が活性発現に及ぼす影響に関する知見を得ることができた。
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