研究概要 |
ある種の耐性がん細胞で過剰発現している、グルタチオン(GSH)およびグリオキサラーゼI(GloI)が薬剤耐性を誘発していると考え、耐性がん細胞中のGSHを減少させると同時にGloIを阻害することのできる化合物の合成を行った。5,5-ジメチル-1,3-シクロヘキサンジオンを出発原料とし、酸性条件下エタノールの付加とつづく脱水反応によりエノールエーテルとした。これを水素化アルミニウムリチウムによる還元に付し、5,5-ジメチルシクロヘキセノンを得た。つづいてBaylis-Hillman反応によりヒドロキシメチル基を導入して2-ヒドロキシメチル-5,5-シクロヘキセノンとし、最後に末端1級アルコールをクロトノイル化して標的化合物を得た。また、この化合物は抗がん剤との併用でさらなる耐性克服活性があると考えられるため、この化合物の一部を抗がん剤と連結させることとした。2-ヒドロキシメチル-5,5-シクロヘキセノンの末端1級水酸基に、脱離基として4-ニトロフェノキシカルボニル基を導入した後に、抗がん剤として塩酸ドキソルビシンを塩基性条件下に反応させた。合成した化合物は有機溶媒による抽出が困難であったためその単離に成功しておらず、現在その単離条件を検討している。さらに、合成した化合物の活性を評価するために、アポトーシス耐性ヒト膵癌細胞(AsPC-1細胞)の培養を行った。購入した細胞が、基本培地に抗生物質を加えた条件で培養可能かどうかを確認し、繰り返しの継代による細胞の変化を観察した。今後は培養した細胞の抗がん剤耐性を調べた後に、合成した化合物を与えた際の耐性克服能を評価する予定である。
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