はじめにエステル基とオキシムエーテル基に共役したオレフィンを基質として用いて、トリエチルボランによる位置選択的エチルラジカル付加反応を検討した。その結果、反応は位置選択的に進行し、カルボニル基のα位がエチル化された付加体が得られた。また、本反応を重水存在下で行ったところ、β位が重水素化されたことから、中間体としてN-ボリルエナミンの生成が示唆された。次に、N-ボリルエナミンを求電子試薬で捕獲する目的で、パラホルムアルデヒド存在下、ドミノ型ラジカル付加-アルドール反応を検討した。その結果、位置選択的ラジカル付加、アルドール型反応およびラクトン化が一挙に進行しγ-ブチロラクトンが得られた。また、種々のアルデヒド類を用いたドミノ型ラジカル付加-アルドール反応も効率的に進行した。なお、その主立体異性体はオールトランス体であり、N-ボリルエナミン上のホウ素原子のアルデヒドの配位による6員環遷移状態を経由して反応が進行したと考えられる。本反応はN-ボリルエナミンの初めての反応例である。さらに、カンファースルタムを不斉補助基としたジアステレオ選択的ドミノ反応を検討したところ、収率よく反応は進行し、γ-ブチロラクトンが高立体選択的に得られた。本反応では、ラクトン化による不斉補助基の除去も容易に進行し、ジアステレオ選択的反応でしばしば困難であると言われている不斉補助基の除去を反応系内で容易に行うことが出来る利点がある。さらに得られたγ-ブチロラクトンを高度に官能基化されたγ-アミノ酸への誘導にも成功した。
|