研究概要 |
本研究では、コンフォメーション自由度の制限された光学活性α,α-ジ置換アミノ酸(フォールドマー)を設計し、含有ペプチド二次構造の不斉反応場を利用した機能性分子の創製を目的とした。 本年度は、アミノ酸側鎖を修飾した新規光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸の合成、および不斉反応場を構築するためのモデルペプチドの合成とコンフォメーション解析を行った。 新規光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸としては、アミノ酸の側鎖にアジド基、アミノ基、ピリジル基、トリアゾール基、およびグアニジノ基を有する化合物を合成した。モデルペプチドとしては、天然のアミノ酸であるL-ロイシンシークエンス中に、構造の最も単純なα,α-ジ置換アミノ酸である2・アミノイソブタン酸Aib、および著者の合成した光学活性環状α,α-ジ置換アミノ酸(S,S)-A_<C5C>^<dOM>を導入したヘキサペプチドCbz-(L-Leu-L-Leu-Aib)_2-OMe、およびCbz-[L-Leu-L-Leu-(S,S)-A_<C5C>^<dOM>]_2-OMeを設計-合成した。 ペプチドのコンフォメーション解析は、結晶状態においてはX線結晶解析および固体CDスペクトル、溶液状態においては^1H-NMR、FT-IR、CDスペクトルを用いて行った。その結果、Aibを導入したヘキサペプチドは、結晶および溶液中において右巻きの3_<10>-ヘリックス構造を形成したのに対して、(S,S)-A_<C5C>^<dOM>を導入したヘキサペプチドはα-ヘリックス構造を優先的に形成した。これまでにα-ヘリックス構造を形成するためには、7残基以上のシークエンスが必要であると報告されていたが、本研究により、側鎖に置換基を有する環状α,α-ジ置換アミノ酸を用いることで、これまでに報告例の無い6残基という短いペプチドシークエンスでα-ヘリックス構造を形成できることが明らかとなった。
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