還元応答型HPLC/ECD分析システムにイオン対分離モードを採用することで3-ニトロチロシン(3-NT)を良好に検出できることを見出した。また本分析システムに用いる最適なイオン対試薬は、1mM1-デカンスルホン酸ナトリウムであることが判明した。さらに本分析システムにおける3-NTの分析特性を検討したところ、定量濃度範囲は0.75〜50μM、検出下限濃度は0.5μMであった。 ところが3-NTの血中濃度は健常人で0.03〜0.05μMであり、疾患患者ではその数百倍にまで上昇すると考えられている。従って還元応答型HPLC/ECD分析システムを3-NTの生体分析に適用する場合、本分析法のさらなる高感度化が必要である。そこで還元応答型HPLC/ECD分析システムに組み込まれているカラムスイッチングシステムを3-NTのオンライン・プレ濃縮法として活用し、本分析システムを用いた3-NT分析法の大容量化および高感度化を試みた。その結果、10〜500μLの範囲内で分析試料容量を変化させることのできる容量可変型3-NT分析法の開発に成功した。また、改良した分析法の分析特性を検討したところ、定量濃度範囲は25nM〜50μM、検出下限範囲は10nMであり3-NTの分析濃度範囲を大幅に拡大させることに成功した。 次にヒト尿試料を用いて、還元応答型HPLC/ECDシステムを用いた3-NT分析法の生体適合性を検討した結果、ヒト尿中に存在する多種・多量の夾雑物が本分析法を妨害することが明らかとなった。そこで逆相系充填剤が充填された固相抽出法を用いたヒト尿試料の前処理条件を検討したところ、Waters社およびPiatech社製の固相抽出カートリッジを用いた前処理を実施することで、本分析システムを用いた3-NTの尿試料分析法の開発に成功した。
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