研究概要 |
本研究は、これまでの研究成果をさらに発展させ、疾患モデル動物の生体内での機能の違いを如何に画像解析できるかに着目して研究を計画した。生体内細胞レベルでの機能の違いを画像解析するには、現段階では造影剤に種々機能を持たせ、その違いを画像解析することで達成できる。昨年度までに、性質の異なる造影剤の窒素核を14N、15Nでそれぞれ標識することで、異なる造影剤を同時に分離して画像解析できる可能性を示した。また、本手法が動物レベルでも応用可能であることも明らかにした。これらニトロキシルラジカルは、フリーラジカルと高い反応性を有し、生体内フリーラジカル反応を追跡するための造影剤や抗酸化剤として開発が進められている。しかしながら、ニトロキシルラジカルは、生体内還元物質であるアスコルビン酸とも反応するなどといった問題点があり、生体で用いるにはこれを回避した化合物の開発が必要である。そこで、本年度は、ニトロキシルラジカルのラジカル周辺部分の構造に着目し、ニトロキシルラジカルの新規合成経路の確立とその評価を目的とした。 2,2,6,6,テトラメチル-4-ピペリドンとシクロヘキサノンなどのケトン体とを反応させ、2、6位置換基誘導体ニトロキシルラジカルを合成した。合成した化合物は、X-band ESR等を用いて・OHやアスコルビン酸との反応性を解析した。 2,2,6,6,テトラメチル-4-ピペリドンの3,5-位の活性メチレンがカルボニル化合物と容易にアルドール反応し、続いて、Grob fragmentationによるピペリジン環の開裂、更にアンモニアの付加による新ピペリドン環のone step合成などにより、2,6置換ピペリドン体の新合成法に成功した。一方。アスコルビン酸や・OHとの反応性を検討した結果、アスコルビン酸とほとんど反応せずに、・OHラジカルと高い反応性を有する化合物、あるいは、アスコルビン酸と高い反応性を有する化合物を見いだした。 以上の結果より、ニトロキシルラジカルの2,6位の置換基を誘導体化することで、フリーラジカルや還元物質と様々な反応性を有する化合物を開発できる可能性を示した。
|