研究課題
アルツハイマー病(AD)原因因子APP(Amyloid precursor protein)は一回膜貫通型蛋白質であり、細胞外領域及び膜内領域において二回の切断を受けた後、大きな細胞外領域断片、AD原因物質Aβ及び短い細胞内領域断片(APP intracellular domain ; AICD)を生成する。近年の報告においてAICDが核内に移行し、遺伝子転写に関わることが示唆されてきた。本研究ではAICDのリン酸化に着目し、遺伝子転写に関わる機能について探索した。その結果、1.マウス脳組織においてリン酸化型AICDと非リン酸化型AICDが存在し、核内においては非リン酸化型AICDのみが存在すること、2.これまでAICDの核内移行には細胞内アダプター分子FE65が必須であると考えられてきたが、FE65非依存的にAICDが核内移行しうること、3.膜上に存在するAPP全長が定常的にFE65を捕捉しており、膜上のAPPがリン酸化されることによって、捕捉していたFE65が細胞質側に放出されることを見いだした。これまでの知見においてFE65はAICDの転写促進活性の補因子と考えられており、この制御機構によってFE65の細胞内局在が制御されていることを明らかとした。上記に述べたAPPのリン酸化はAPP695アイソフォームの668番目のスレオニン(Thr668)で生じるが、このThrをアラニンに置換したマウス(APP T668A knock-in mouse)について生成するAβ量を測定したところ、野生型に比較してAβ量に変化が認められないことが分かった。
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