研究概要 |
1.ケミカルシャペロンとして知られている4-フェニル酪酸(4-PBA)の小胞体ストレス抑制作用について明らかにするため,小胞体ストレスに対する4-PBAの作用を検討した.その結果,4-PBAは小胞体ストレスを抑制し,それによる細胞死を抑制した.さらに4-フェニル酪酸の作用機序を明らかにするため,in vitroにおけるシャペロン活性を検討したところ,4-PBAはin vitroにおいてタンパク質の凝集を抑制することを明らかにした.家族性パーキンソン病(AR-JP)の原因遺伝子Parkin(ユビキチンリガーゼ:E3)の基質タンパク質Pael-Rは,AR-JPにおいて小胞体に蓄積し,小胞体ストレスを引き起こす.Pael受容体に対する4-PBAの作用を検討したところ,4-PBAはPael受容体の正常な発現を促進し,Pael受容体蓄積による小胞体ストレスとそれによる細胞死を抑制した. 2.小胞体のタンパク質分解系である小体関連分解(ERAD)に関連するユビキチンリガーゼHRD1が脳内において黒質の緻密層に多く存在することを見い出した.さらに,HRD1の基質となるタンパク質を検討したところ,HRD1がPael-Rをユビキチン化し,分解を促進することを明らかにした.また,HRD1はPael-Rの蓄積によって生じる細胞死を抑制することを示した.
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