研究概要 |
オートファジーには2つのユビキチン様修飾因子であるAtg12とAtg8が必須である.今回,Atg12の植物ホモログおよびAtg8のプロセシングと脱結合に関わるヒトAtg4Bの結晶構造の決定に成功した.植物Atg12はユビキチンとの配列相同性がないにも関わらず,典型的なユビキチンホールドを取っていた.その表面には,Atg12ホモログでのみ保存された疎水性領域と,Atg8,Atg12ホモログ両方に共通して保存された疎水性領域が存在した.後者の疎水性領域はユビキチンに高度に保存された疎水性領域に一部重なっており,結合反応に関わることが示唆された.一方前者の疎水性領域は,Atg12ホモログでのみ保存されている点,酵母Atg12の変異株を用いた実験でその領域の残基F154がオートファジー活性に必須である点から,Atg12固有の役割に関わっていることが示唆された. Atg8はユビキチン様反応により,リン脂質の一種であるphosphatidylethanoleamine(PE)と結合する.Atg4は脱脂質反応を担うという点でユビキチンや他のユビキチン様修飾因子に関する脱結合酵素と比べてユニークである.またAtg4はいかなる既知のプロテアーゼとも配列相同性を持たない.しかし驚くことにヒトAtg4Bの構造は,古典的なシステインプロテアーゼであるPapainと高い構造相同性を示し,また脱ユビキチン酵素の一つであるHAUSPとも高い構造相同性を示した.触媒残基Cys-74はHis-280,Asp-278と典型的な触媒3残基を形成していた.Cys-74はループにより表面を覆われていることから,ヒトAtg4Bは単体では自己阻害構造をとっていると考えられた.Atg4は自己阻害構造をとることで非特異的な分解活性を防ぎ,高い基質特異性を保持していると考えられる.
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