老人斑アミロイドを構成する新規成分CLACがアルツハイマー病発症に果たす役割、及び老人斑に蓄積するメカニズムについて検討を進めた。 まずCLAC-P遺伝子を脳神経細胞に過剰発現することにより、CLAC蛋白質を脳実質中に分泌するトランスジェニック(tg)マウスを作出した。そこで加齢と共に脳内にAβ蓄積が生じるAPPtgマウスであるTgCRND8ライン及びJ20ラインを用い、CLACtgマウスと交配しAPP/CLAC2重tgマウスを作出した。これらのマウスを用いて以下の点を明らかにした。1.APP/CLAC2重tgマウスではAD患者脳での所見と同様にAβ斑にCLACは共局在した。2.海馬領域における抗Aβ抗体陽性面積を測定したところ、同腹のAPPtgマウスに比べ、9ヶ月齢のTgCRND8ラインで約30%、12ヶ月齢のJ20ラインで約50%の減少が認められた。3.APPtgマウス脳で観察されたdiffuseな、あるいは巨大なcoreを持ったAβ斑は減少し、中小型のcoreを持ったAβ斑が増加した。4.マウス脳から抽出した2%SDS不溶・70%ギ酸可溶画分中のAβ量は同腹のAPPtgマウスと比べ変化がなかった。これらの知見はCLACがAβの蓄積に対し、その蓄積様式を決める因子である可能性を示し、今後さらに詳細な検討を行う必要がある。 またCLACは凝集したAβと特異的に結合することから、Aβの細胞毒性に及ぼすCLACの役割を、HEK293細胞を用い検討した。その結果、5.CLACはAβの細胞毒性を抑制する。6.細胞毒性抑制効果はCLACがAβと結合することによって発揮される。ことを明らかにした。これはCLACがアルツハイマー病発症に対し、抑制的に働く可能性を示すものである。 さらにCLAC-Pノックアウトマウスの作出のためマウスCLAC-P遺伝子のexon3をneomycin耐性遺伝子に置換したtargeting vectorの作出を行った。今後個体の作出にとりかかる。
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