研究概要 |
老人斑アミロイドを構成する新規成分CLACがアルツハイマー病発症に果たす役割ついて検討を進めた。これまでに作出したCLAC-P遺伝子を脳神経細胞に過剰発現するトランスジェニック(tg)マウスに対し、加齢と共に脳内にAβ蓄積が生じるAPPtgマウス(J20)を交配させAPP/CLAC2重tgマウスを作出した。このマウスを用いて以下の点を明らかにした。1APP/CLAC2重tgマウスではAD患者脳での所見と同様にAβ斑にCLACが共局在した。2海馬領域における抗Aβ抗体陽性面積を測定したところ、同腹のAPPtgマウスに比べ、12、15ヶ月齢のAPP/CLAC2重tgマウスで約50%減少した。3APPtgマウス脳で観察されたdiffuseな、あるいは巨大なcoreを持ったAβ斑は減少し、中小型のcoreを持ちthioflavinS陽性なAβ斑が増加した。4マウス脳から抽出した2%SDS不溶・70%ギ酸可溶画分中のAβ量は同腹のAPPtgマウスと比べ変化がなかった。これらの知見はCLACがAβの蓄積に対し、その蓄積を成熟化させる因子である可能性を示す(Hashimoto et al.,2006)。 またアルツハイマー病におけるAβの凝集、蓄積メカニズムを考える上で、内部に家族性アルツハイマー病変異を持つAβの解析は重要である。そこで本邦で同定された鳥取型変異(D7N)及び英国型変異(H6R)を持つAβの線維化をin vitroにおいて検討したところ、いずれも野生型に比べ凝集が促進するものの、線維化過程の中問体であり、神経毒性を示すことが知られるprotofibrilの形成が少ないことがわかった(Hori et al.,2007)。この結果はFADの発症においてAβの線維形成がprotofibrilといった中間体の形成のみならず重要であることを示すものである。
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