本年度はERK-MAPキナーゼの細胞内局在に影響を及ぼす分子p26について、結合タンパク質の同定、および各タンパク質との複合体形成を中心に解析を進め、以下に示す結果を得た。 【p26結合タンパク質の同定】 GST pulldown assayによってp26と特異的に結合するp62、p120を分離精製し、各分子について質量分析法によってその同定を行った。その結果、p62はRNA結合タンパク質であり、またERK-MAPキナーゼによってリン酸化されることが報告されている分子であった。一方、p120はアクチンフィラメント上を移動するモータータンパク質の一種であった。 【p26、p62、およびp120複合体形成】 各種GST融合p26欠失変異体を作成し、GST pulldown assayによってp62およびp120結合領域の特定を行った。その結果、p62との結合にはp26のSH3ドメインが、またp120との結合にはp26のN末端とC末端領域が必須であることを見出した。なお、細胞内においてp26とp120の結合は血清や上皮成長因子等の刺激によって解離するが、それはMEK阻害剤によって抑制されること、すなわちp26/p120複合体はERK-MAPキナーゼ経路によって制御されることを明らかにした。 【p26、p62、p120によるERK-MAPキナーゼ細胞内局在制御機構】 p26を細胞に過剰発現させると血清刺激に依存したERK-MAPキナーゼの核内移行が抑制されたが、p62との結合領域を欠失したp26を発現させた場合にも同様にERK-MAPキナーゼの核内移行は抑制された。
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