Hsp105プロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子を連結したコンストラクトを安定に発現するC3H10T1/2細胞(C3H/pGL105細胞)を用いて、Hsp105の発現を誘導する薬物のスクリーニングを行い、サリチル酸誘導体にこのような活性があることを明らかにしていたが、さらに官能基を置換した数種類の物質について検討し、Hsp105の発現誘導にはフェノール性水酸基が重要であることを見出した。また、これらのHsp105の発現を誘導する物質を細胞に処理すると、タンパク質の凝集が抑制され、これに伴う細胞死も減少した。さらに、より低濃度でHsp105の発現を誘導する薬物として、AceclofenacおよびDiflunisalが見出された。 平成18年度まではATP枯渇によるタンパク質変性に対するHsp105の保護効果についてモデルタンパク質としてルシフェラーゼを用いてきたが、Hsp105の細胞内でのターゲットとなるタンパク質が不明であった。そこで、今年度はこの点についても検討することとした。ATP枯渇状態で一定時間処理した後、Triton X-100可溶性画分および不溶性画分を回収しSDS-PAGEで分離した結果、数種類のタンパク質バンドがATP枯渇の時間に伴いTriton X-100可溶性画分から不溶性画分へと移行していた。これらのうち、約50kDaと約45kDaの2つのタンパク質はHsp105を高発現させることにより、不溶性画分への移行が遅れることがわかった。現在、これらのタンパク質の同定を試みている。
|