本年度は、アンギオテンシンIV受容体/胎盤性ロイシンアミノペプチダーゼ(AngIVR/P-LAP)の細胞内動態可視化システムを構築することを目的に、まずAngIVRの細胞質ドメインとGFPとの融合タンパク質発現ベクターを構築した。遺伝子導入後の細胞内での融合タンパク質の局在を調べた結果、内因性のAngIVRと同様であった。既にインスリン刺激によって本受容体が細胞膜に移行することが知られている脂肪細胞を用いて融合タンパク質安定発現細胞株を樹立し、インスリン処理後の細胞膜移行現象を共焦点レーザー顕微鏡で観察したものの、本細胞では遺伝子発現量が低く、蛍光シグナルが弱かったため膜移行現象を観察することができなかった。そこで、異なるAssay系で本現象を確認するため、細胞膜表面ビオチン化法を用いて内因性AngIVR/P-LAPの細胞膜移行について検討した結果、インスリン刺激によりAngIVR/P-LAPが細胞膜へと移行することを確認した。現在、確立した本Assay系を用いて細胞膜移行現象を誘導する種々の生理活性ペプチドや低分子化合物を探索している。また、融合タンパク質の発現量をエレクトロポレーション法により顕著に増加させることに成功したため、本法により発現させた融合タンパク質を用いて、本受容体の細胞質ドメインに結合し、細胞膜移行を制御する因子をGFP抗体を利用して探索中である。 また、未知のAngIVの生理作用について検討するため、AngIV処理によるNF-kBやp38MAPKを介するシグナル伝達についても検討したが、受容体の発現している脂肪細胞、神経細胞、腎上皮細胞、血管内皮細胞においてこれらの分子の活性化を確認することはできなかった。
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