本研究課題では、内在性Rab27Aの機能を阻害せずにRab27Aの活性化を高感度に検出するRab27A活性化センサーの作製を目指している。シナプトタグミン様タンパク質(Slp)およびSlac2ファミリーの8つのタンパク質はアミノ末端に活性型Rab27A特異的結合ドメインSHD (Slp homology domain)を有しており、このドメインを利用すれば活性型Rab27Aを選択的に認識するツールを作ることが可能と考えられる。しかし、野生型のSHDを用いては内在性タンパク質と競合する可能性が高い。そのため、Rab27AとSHDの結合親和性の最適化が重要な問題となる。そこで今年度はSHDの点変異体やキメラなど様々な変異体を作製して、Rab27Aとの結合親和性の最適化を図った。その結果Rab27Aとの結合が強いものから弱いものまで、様々な結合親和性を持つSHD変異体が得られた。今後は得られた変異型SHDタンパク質の精製とメロシアニン蛍光色素の導入を行い、Rab27A活性化センサーとして実際に利用可能なものを選択していく計画である。 また作製した活性化センサーを用いて生きたメラノサイトにおける内在性Rab27Aの活性化を時間的・空間的に解析することが本研究課題の最終的な目標である。その為にはRab27Aとそのエフェクター(Slp/Slac2)の機能に関する更なる知見の積重ねが必要である。そこで今年度は機能があまり解明されていなかったRab27A結合タンパク質Slac2-cに関して、メラノソーム輸送における機能解析を行った。その結果、Slac2-cは以前に明らかにしたRab27A-Slac2-a-ミオシンVa複合体とは対照的に、Rab27A-Slac2-c-ミオシンVIIa複合体として、網膜色素上皮細胞のメラノソーム輸送で機能する事を示唆する結果が得られた。
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