本年度はTMXの大量生産・精製系の確立を行うことを目標に研究を行った。まず、大量生産系の構築のために、発現ベクターの種類を複数構築した。得られた発現ベクターと、ホスト株、発現誘導時期などの組み合わせを検討した。その結果、GSTタグをTMXのN末に付与した発現ベクターを用いた場合に、低温にて緩やかな発現誘導条件にて目的タンパク質の発現を誘導することにより目的タンパク質が可溶画分に得られることを精製後のSDS-PAGEや質量分析にて確認した。精製についてはGST及び6xHisタグを用いたaffinity精製によりSDS-PAGEによる視認で90%程度以上の精製度を有することが確認できた。また、この系を用いることで大腸菌培養液1リットルあたり、0.2mgと結晶化条件のスクリーニングを行うに当たっては最低限ではあるが必要な収量を得られることを確認した。次に、得られたTMXが正しい折りたたみ構造をとっているのかをTMXとの結合が知られている薬剤との結合を質量分析にて確認を行った。しかしがら、結果はネガティブであり、今年度に構築した大量生産・精製系では結晶化に適した試料を得られないことが示唆された。以上のことから、結晶化に適した正しい構造をもつサンプルを得るためには、発現時にシャペロン系のタンパク質を共存させるなど、さらなる改良が必要であることが強く示唆された。また、不溶画分には大量のTMXが得られていることから、リフォールディングにより正しい構造をもつTMXが得られるならば生産量の問題も同時に解消される可能性がある。よって、こちらの検討も現在行っているところである。
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