研究概要 |
【目的】タンパク質プレニル化と細胞のアポトーシスシグナルの関連を明らかにするため、新規なプレニル化阻害剤を用いて、細胞の応答性を検討した。 【方法】プレニル化阻害剤FPTASE INHIBITORA ({4-[[5-[[4-(3-chlorophenyl)-3-oxo-1-piperazinyl] methyl]-1Himidazol-1-yl]methyl]-benzonitrile};FTI-A,メルク社より供与)について、ヒト臍帯静脈血管内皮細胞、ヒト微小血管内皮細胞株およびヒト白血病細胞株に対する影響を検討した。対照として、プレニル化阻害によりアポトーシスを誘導することが報告されているHMG-CoA阻害剤Lovastatinを用いた。 【結果と考察】FTI-Aは、1〜100μMで血管内皮細胞の増殖を濃度依存的に抑制したが、100μMの濃度においてもアポトーシスを誘導せず、Lovastatinとは異なる作用を示した。FTI-Aの増殖抑制効果は白血病細胞株K562、U937、HL60、BALL-1、Jurkatでも認められ、特にK562およびJurkatでは顕著であった。FTI-Aは、ファルネシルトランスフェラーゼ(FTase)とゲラニルゲラニルトランスフェラーゼ(GGTase)の両者を阻害する活性を持つが、in vitroでのIC_<50>値が、FTaseに対して2nM、GGTaseに対して98nMと報告されており、FTaseをより強く阻害する活性を持つ。これに対してLovastatinは、メバロン酸の合成阻害によりファルネシル基およびゲラニルゲラニル基の供給を等しく抑制する。両薬物に対する細胞の応答性の違いは、ゲラニルゲラニル化の阻害程度の差に起因すると考えられることから、タンパク質プレニル化の中でもゲラニルゲラニル化が細胞の生存/死シグナルの制御において重要であると考えられた。
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