研究概要 |
本年度は、初めに転写因子Sp1遺伝子に対するsiRNAを複数作製して、β-1,4-ガラクトース転移酵素(β-1,4-GalT)V、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2の発現を抑制する効果について、がん細胞を用いて検討しようとした。しかし、複数のsiRNAのデザイン及び合成に時間がかかったことから、実験に使用するがん細胞の選定をSp1遺伝子の発現レベルや増殖速度を指標に行なった。その結果、調べたがん細胞の中でヒト肺がん細胞A549がSp1遺伝子の発現が高く、増殖速度も速いことが判明した。従って、本研究ではA549細胞を用いてsiRNAの効果を解析することにした。 合成した4種類のsiRNAの混合物でA549細胞を2日間処理すると、sp1遺伝子の発現量に低下が認められた。同様に、β-1,4-GalTV遺伝子のプロモーター活性は約40%低下し、遺伝子発現も低下していた。一方、VEGFやMMP-2の遺伝子発現については顕著な低下が見られなかった。次年度は、まず初めに検出感度を高めたELISA法でこれらのタンパク質の検出を行ない、siRNAの効果を確認する。A549細胞には、接着分子としてインテグリンαvβ3が主に発現している。そこで、Sp1遺伝子siRNAで処理したA549細胞からαvβ3に対する抗体を用いて接着分子を精製し、その糖鎖構造の変化を糖鎖構造の違いを認識する種々のレクチンを用いて解析する。
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