昨年までの本研究において、染色体6q16と12p12に相互転座が見られる重度知的障害の症例の12p12の転座断点部位に、PLEKHA5遺伝子が局在することを明らかにし、PLEKHA5が本症の病因遺伝子である可能性を示唆した。そこでPLEKHA5の脳神経細胞における役割と、PLEKHA5の異常による本症の病態を明らかにする目的で、本年度は以下の研究を行った。 (1)PLEKHA5はフォスファチジルイノシトールリン酸(PIP)と結合するPHドメインを持つ約127.5kDaの蛋白質をコードしている。PLEKHA5蛋白質のPIP結合特異性を明らかにするためにHis-tag、Flag-tag融合蛋白質を発現するベクターを作製し、293細胞に導入して融合蛋白質を発現させた。同蛋白質を用いてPIP結合を調べたが、Tagが非特異的にPIPに結合し解析不能であった。 (2)PLEKHA5タンパク質の細胞内在を調べるために、GFP融合PLEKHA5蛋白質を発現するベクターを作製した。このベクターを293細胞に導入し、GFPの蛍光を観察した結果、核以外の細胞質全体にGFPの蛍光が認められた。 (3)PLEKHA5に特異的なsiRNAを発現するベクターを作製した。神経細胞のモデルであるNeuro2a細胞にRetinoic acidを投与して神経突起を誘導させ、siRNAによるPLEKHA5の神経突起伸長への影響を調べた。PLEKHA5の発現抑制により神経突起の伸長が抑制され、神経突起伸長に同蛋白質が重要な役割をしていると考えられた。
|