昨年までの研究において、PLEKHA5が重度知的障害の症例の染色体転座部位に局在することを明らかにした。PLEKHA5が本症の病因遺伝子であることが示唆された。本年度は、PLEKHA5の脳神経細胞における役割と、PLEKHA5の異常による本症の病態を明らかにする目的で、以下の研究を行った。 1)マウス海馬初代神経培養細胞におけるPlekha5の発現抑制の影響 マウスPlekha5の発現を抑制するsiRNAを産生する発現ベクター(pSUPER-Plekha5)を作製し、胎生17.5日(E17.5)のマウス海馬初代神経培養細胞に導入し、16、24、48、72時間後と5日後に生存細胞数を測定した。Plekha5の発現が抑制された神経細胞では、コントロールに比較して顕著な生存細胞数の減少(72時間後にコントロールの約20%)が見られた。さらに生存していた細胞の形態を解析したところ、Plekha5を発現抑制した神経細胞では、コントロールに比較して細胞体の長径よりも短い神経突起を持つ神経細胞の割合が顕著に高くなっていた(コントロール細胞:7.5%、Plekha5発現抑制細胞:44.5%)。 2)Plekha5全長cDNAの単離 Plekha5はPHドメインを持ち、フォスファチジルイノシトールリン脂質(PIP)に結合することが予想される。Plekha5蛋白質のPIP結合特異性を明らかにするために、まず完全長の同遺伝子のcDNAの単離を行った。マウスcDNAライブラリーよりPCR法を用いてPlekha5 cDNAを増幅した。その結果、多くのスプライシングヴァリアントが同定されたが、最終的に本研究中にNCBIデータベースにおいて新しく発表となった完全長のcDNA(3810bp、1270アミノ酸をコード)を単離した。
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