私共の研究グループでは、Rho/Rhotekinシグナルによって、セプチンフィラメントの構造が制御されていることを報告している。しかしながら、種々の実験の結果から、セプチンとRhotekinの結合は、間接的であることがわかってきた。そこで、セプチンとRhotekinの結合を介在する分子の同定を目指し、Two-hybrid法によるRhotekin結合タンパク質の検索を行った。その結果、TC-10の結合タンパク質として同定された、PIST(PDZ domain protein interacting specifically with TC10)とRhotekinが結合することがわかった。RhotekinとPISTの結合は、免疫沈降法およびpull downアッセイによって確認できた。また、培養細胞系でRhoの活性化型によって、PISTとRhotekinの結合が減弱することがわかった。大腸菌から精製したGST-PISTタンパク質を抗原として、特異抗体を作製し、上皮系細胞であるMDCK細胞でのPISTの局在を検討した。その結果、上皮細胞としての極性が形成されていない繊維芽細胞様のMDCK細胞では、PISTは主にゴルジ体に局在し、一部は細胞間接着部位に局在していることがわかった。このとき、Rhotekinは、主にゴルジ体での局在が見られた。一方、上皮細胞としての極性が形成されたMDCK細胞では、PISTとRhotekinは主に細胞間接着部位のカテニンの局在と一致するアドヘレンスジャンクションに局在することがわかった。細胞極性形成過程におけるPISTおよびRhotekinの局在変化を調べたところ、PISTは、比較的極性形成の初期の段階で細胞間接着部位での局在が見られたが、Rhotekinはそれよりも少し遅れて細胞間接着部位へ移行することがわかった。また、カルシウム依存的な細胞間接着の形成過程においてもPISTがRhotekinよりも先に細胞間接着部位へ移行することがわかった。これらのことから、細胞間接着部位、とくにアドヘレンスジャンクションの形成過程において、PISTおよびRhotekinは何らかの機能を果たしていることが推測された。
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