抗HIV-1活性が期待される化合物を探索するための、均一系での連続分注によるハイスルーフット・スクリーニング系を発展させるべく検討を行った。HIV-1 gp41のHR1領域とHR2領域の結合に関わる2箇所の疎水性相互作用による結合領域に結合する低分子化合物を探索するために、それぞれの結合領域に相当する合成ペプチドをビオチンタグ化ペプチドおよびHis6タグ化ペプチドとして調製した。それぞれのタグ化ペプチドとして、L-アミノ酸から構成されるペプチドの組み合わせとD-アミノ酸から構成されるペプチドの組み合わせを用意し、計4種類のスクリーニング系を確立した。このうち、市販医薬品であるT-20の疎水性部位を認識するHR1上の領域に結合する化合物を探索するための系は、期待された感度が得られなかった。このため、合成ペプチドのcoiled-coil構造の安定化による感度の向上について検討を行い、新たにデザインしたペプチドT-20EKを用いることでスクリーニングに適用可能な評価系を確立した。また、このT-20EKは、T-20に比べて約8倍強力な抗HIV活性を示すとともに、T-20耐性株に対しても効果を示すことを明らかにした。 一方、HIV-1 gp41のHR1領域に親和性を有する化合物を選抜するための結合親和性の違いに基づく化合物評価系の確立について検討を行った。HR1領域のペプチドに相当するビオチン標識N36とHR2領域のペプチドC34もしくはSC35EKを混合後、ストレプトアビジンビーズにて複合体を回収し、酸1生溶液での溶出の後、溶出液をLC-MSにて分析することで、HR2ペプチドの結合を高感度に検出可能であることを確認した。
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