研究概要 |
本研究は、ヒ素によって誘導される活性酸素種(ROS)の生成機構と作用機序とを、ヒ素の化学形・分布と関連づけて検討することを目的としている。そこでまずは、化学形態の異なる様々なヒ素化合物を細胞に暴露し、その際に細胞から発生するROS量と細胞生存率との相関について検討を行った。その結果、arsenite, methylasronous acid, dimethylarsinous acidの3つについて、IC_<50>値付近の暴露濃度においてROS発生量に大きな差異が見られた。この事から、各ヒ素化合物の毒性発現機序は異なることが示唆された。そこで、そのROS産生の細胞内局在を検討するため、各オルガネラ特異的染色試薬とROSプローブによる共染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、dimethylarsinous acid暴露時のROS発生が細胞全体で起こっているのに対し、arsenite, methylasronous acidについてはROS発生がミトコンドリアに強く局在していることが明らかとなった。ことことからヒ素化合物による酸化ストレス発生において、その化学形によって産生量のみならず、発生機構も異なることが明らかとなった。今後、ミトコンドリアへの作用を、分子レベルでより詳細に検討していく予定である。
|