研究概要 |
本研究は、ヒ素によって誘導される活性酸素種(ROS)の生成機構と作用機序とを、ヒ素の化学形・分布と関連づけて検討することを目的としている。平成17年度までに、肝細胞に各種ヒ素化合物を暴露した際、ヒ素の化学形態によってROS産生に大きな違いがあること、またdimethylarsinous acid暴露時のROS産生が細胞全体で起こっているのに対し、arsenite, methylasronous acidについてはROS発生がミトコンドリアに強く局在していることが明らかとなった。ことことからヒ素化合物による酸化ストレス発生において、その化学形態によって産生量のみならず、発生機構も異なることが明らかとなった。そこで平成18年度には、特にミトコンドリアに注目しROS産生の局在性の検討を行った。細胞内で発生したROSはゲノムDNAを傷害するが、ミトコンドリアにおいて発生したROSはより近傍にあるミトコンドリアDNAを選択的に傷害する。arsenite, methylasronous acid暴露細胞においてゲノムDNAとミトコンドリアDNAの酸化的障害を比較すると、過酸化水素暴露にくらべミトコンドリアDNAの障害性が高いことが分かった。このことは、arsenite, methylasronous acidによるROS産生がミトコンドリアに局在して起こっていることを示すと考えられる。 また、dimethy larsinous acidでROS産生が細胞全体で起こった点に関しても、ROSと各種小器官を共染色することにより、小胞体がそのROS産生の場であることを示した。
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