研究概要 |
血液脳関門が未形成の胎児期から乳幼児期の間に暴露され脳に取り込まれる物質のリスクを考える上で、環境化学物質を神経毒として評価することは不可欠である。本研究では、中枢神経系においてのみ広範に存在し、重要な働きを行っているグルタミン酸受容体を多く発現している大脳皮質初代培養神経細胞を用いて、グルタミン酸受容体を介する神経毒性を中心に作用の分類を行い、危険性の精確な認知を促すことを目的として実験を行った。初期スクリーニングの結果神経毒性があると認められた数種類の環境化学物質についてグルタミン酸受容体アンタゴニストMK-801による神経細胞死保護効果を検討したところ、トリブチルスズ、ゲニステイン(100uM,高濃度)による細胞死はMK-801により抑制された。そこで細胞外グルタミン酸濃度を調べたところ、トリブチルスズ、ゲニステインはともに短時間で細胞間隙へのグルタミン酸放出を引き起こしていることが明らかとなった。その放出メカニズムは現在検討中であるが、両物質の高濃度暴露はグルタミン酸神経毒性を誘発すると考えられる。一方、m-ジニトロベンゼン等による細胞死はMK-801により抑制されないことから、グルタミン酸とは無関係に神経細胞死を誘発していることが示唆される。このように環境化学物質を神経毒性メカニズムによって分類することが可能であり、次年度は更に詳細に分類し、メカニズムについて調べる予定である。
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