研究概要 |
本年度はDES暴露による脳撹乱作用の作用発現機構にエストロゲン受容体(ER)のαアイソフォームが関与しているのか否かについて、ERαKO, Wild typeマウスを用いて行動科学的、神経科学的に検討した。 1.行動科学的実験 学習行動を評価するために、受動的回避反応試験を行ったところ、DESを暴露した雄のWild type仔マウスは、Corn oilを暴露した雄のWild type仔マウスに比べ受動的回避反応が有意に阻害され、DES暴露による学習能力の異常が認められた。しかし、雌マウスでは学習能力に異常は認められなかった。そこで、DESを暴露した雄のERαKO仔マウスの学習能力を調べたところ、Corn oilを暴露した雄のERαKO仔マウスに比べ受動的回避反応は阻害されなかった。よってDES暴露による受動的回避反応の阻害には、何らかの形でERαが関与していることが示唆された。また、ERαKOマウスとWild typeマウスの受動的回避反応を比較したところ、ERαKOマウスで受動的回避反応が阻害される結果が得られ、ERαの欠損が学習異常に関与している可能性が示唆された。 2.神経科学的実験 DESを暴露した雄のWild type仔マウスは、Corn oilを暴露した雄のWild type仔マウスに比べ、リン酸化型CaMKII(pCaMKII)のレベルが増加し、これまでと同様の結果が得られた。そこで、DESを暴露した雄のERαKO仔マウスのpCaMKIIレベルを調べたところ、Corn oilを暴露した雄のERαKO仔マウスのpCaMKIIレベルに比べ、変化しなかった。よってDES暴露によるpCaMKIIレベルの増加にも、何らかの形でERαが関与していることが示唆された。
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