本研究の目的は重金属汚染地域の浄化と重金属のリサイクルを目指し、ファイトレメディエーションの技術を確立することである。トランスジェニック植物の作出に際しては、微生物由来の重金属トランスポーターを植物内で発現させ、重金属を植物液胞内へ輸送・隔離させることを構想している。本年度は、微生物由来の重金属トランスポーター(MerC)が植物内へソーティングされるターゲット器官を検証した。シロイヌナズナ培養細胞内におけるGFP融合タンパク質の発現部位を蛍光観察した結果、MerCに関してはGFP-MerCがゴルジ体に局在したのに対し、GFP-MerC-SYP111は細胞膜に、GFP-MerC-AtVAM3は液胞膜にそれぞれ局在した。このことから、SYP111をMerCに融合させることによりMerCを細胞膜に、AtVAM3をMerCに融合させることにより液胞にそれぞれ局在化させることが可能であると考えられた。次に、MerC-SYP111及びMerC-AtVAM3の機能解析を酵母において行った。水銀蓄積性について、MerC-SYP111をもつ酵母はベクターをもつコントロール株とほぼ同等の水銀蓄積量を示したのに対し、MerC-AtVAM3をもつ酵母はコントロール株に比べて有意に高い蓄積量を示した。水銀耐性について、MerC-SYP111またはMerC-AtVAM3をもつ酵母はそれぞれコントロール株とほぼ同様の感受性を示した。以上の結果から、種々の重金属トランスポーターとSYP111またはAtVAM3融合タンパク質のうち、MerC-AtVAM3は液胞膜に局在し、水銀の毒性を軽減するかたちで水銀蓄積量を上昇させる機能をもつ可能性が示唆された。今後はMerC-AtVAM3遺伝子トランスジェニックシロイヌナズナを作出し、重金属耐性及び蓄積性を検討する予定である。
|