昨年度に確立したLC/TOHSによるメタボノーム解析システムの有用性評価を目的として研究を遂行し、平成18年度は以下の成果を得た。 1.健常人尿試料の分析とデータ解析 昨年度に見出された同一健常人尿試料中の代謝物プロファイルの差異、また各個人がそれぞれ有する特徴的なプロファイルに関し、多変量解析法として主成分分析に加えPLS-DA(Partial Least Square Discriminant Analysis)を新規に導入してさらに詳細な検討を行った。その結果、これらの多変量解析法がLC/TOF-MS分析で得られる各個人の代謝物プロファイルを元にしたグルーピング法として有用であることを確認した。さらに本手法はプロファイル変動を見出し、またその変動に寄与する代謝物を探索する方法として有効であることを明らかにした。 2.代謝物同定と簡易データベース作成 対象とした健常人それぞれに特徴的なイオンあるいは共通して見出されたイオンの中で、その精密質量から構造式が推定可能であった数十種について標準品を購入して分析を行い、保持時間と精密質量より帰属を行った。なお、帰属できた化合物の精密質量、保持時間などの情報管理のため、関連文献情報等の情報を加えたLC/TOF-MSデータベースを作成した。本データベースは今後も継続的に情報を追加していく予定である。 3.糖尿病マウス尿試料の分析 II型糖尿病マウス及び対照マウスより経時的に尿試料を採取し、現在測定・解析を継続中である。なお、これまでの基礎検討から、マウス群はそれぞれ特徴的な尿中代謝物プロファイルを有していることが示唆されている。また、本研究では雌雄双方について経時的に採尿を行っており、尿中代謝物の性差、病態変化に伴う代謝物変動に及ぼす性の影響に関しても新たな知見が得られるものと考えている。
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