Organic solute transporter(OST)α/βは、小腸での高い発現およびFXR/RXRαによる制御の可能性から、小腸血管側膜上の硫酸抱合体・胆汁酸トランスポーターであることが期待される。本申請研究は、OSTα/βの輸送特性および発現調節機構の解析を行い、生理機能および輸送基質の体内動態への寄与を解明することを目的としている。 本年度は、輸送機能解析のためのOSTα/β遺伝子発現細胞系の作成・FXR/RXRαによる転写調節機構の解析を行った。 BSEP/ABCC11のin vitro発現系による解析により、胆汁組成に直接的に影響する肝胆管側の胆汁酸排泄輸送体の基質特異性に種差があることが示された。この結果を踏まえ消化管の胆汁酸輸送体にも種差があると考えヒト・ラット・マウスのOSTα/β cDNAを単離し、比較解析を行うこととした。ヒトOSTα/βは市販クローンを購入し、ラット・マウスに関しては小腸より調製したcDNAよりPCRで増幅し全長配列を得た。得られたcDNAを哺乳類発現ベクターに挿入し、非極性細胞(HEK293細胞)および極性細胞(MDCK細胞)への遺伝子導入を行った。既知のOSTα/β基質であるタウロコール酸の細胞内への取り込み能の上昇が見られたことから、安定発現系が構築できていると考えられる。現在、抗体を用いた蛋白発現・細胞内局在の確認を進めている。 転写調飾に関する検討を行うために、ゲノムを鋳型としたPCRを行い5'-上流域の配列を増幅したものをルシフェレースベクターへ挿入した。得られたベクターを、転写調節領域の配列から関与が示唆されたFXR、RXRαの発現ベクターとともにヒト消化管由来のCaco-2細胞へ一過性導入し、転写活性の評価を行った。その結果、OSTα、βともにFXR・RXRαの導入により転写活性の上昇が見られ、FXRのリガンドであるケノデオキシコール酸はこの転写活性をさらに上昇させることが明らかとなった。現在、詳細なメカニズムの解析を行っているところである。
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