近年、片頭痛治療薬としてセロトニン1Bおよび1D受容体の選択的アゴニストであるトリプタン系薬剤が開発され、その高い有効性から第一選択薬としての地位を確立しつつある。しかしながら、いずれのトリプタン系薬剤にも片頭痛の改善が認められない患者が30%程度存在することが知られている。本研究ではその原因としてセロトニン1Bおよび1D受容体の遺伝的多型が関与していると考え、現在報告されているセロトニン受容体遺伝子多型の中で、アミノ酸変異を伴うもの(セロトニン1B受容体4種、1D受容体1種)に関してin vitro発現系を用いた機能解析、すなわち各種トリプタン系薬剤に対する感受性の解析を試みた。 平成17年度には、野生型、変異型合計7種類のcDNAクローニングを終了し、真核細胞用の発現ベクターへのサブクローニングも完了させ、哺乳類由来の培養細胞であり、セロトニン受容体の機能解析に汎用されているCHOK1細胞およびHEK293細胞に遺伝子導入し、セロトニン受容体の安定発現細胞株の構築を試みたが、機能解析に十分な量のセロトニン受容体の安定発現細胞株を得るには至らなかった。 平成18年度には、引き続き野生型、変異型の受容体の安定発現細胞株の構築を継続する一方で、アデノウイルスによる一過性強制発現により結合実験に必要な受容体タンパクを得ることを目的として、クローニングした野生型、変異型のcDNAのアデノウイルスベクターへの組み込みを検討している。受容体の発現を確認後、可及的速やかに変異型セロトニン受容体の機能解析および薬剤感受性を測定し、研究を完了させる方針である。
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