本研究では、血液脳関門(BBB)透過性に及ぼすテオフィリン(TPL)誘発痙攣の影響を評価することを目的とした。6週齢のddY系雄性マウスの尾静脈から、TPL溶液(18mg/mL)を0.94mL/min/gの注入速度で、正向反射が消失して疾走痙攣が発現するまで静脈内定速注入した(Seizure(+)群)。Seizure(-)群には低濃度のTPL溶液(12mg/mL)を、control群にはsalineを注入した。注入終了後、速やかに水溶性物質のマーカーとしてfluorescein溶液を40mg/kgで尾静脈内に瞬時投与した。それぞれの個体において、脳組織中fluorescein濃度(Cbr)、血漿中fluorescein濃度(Cp)を求め、みかけの脳組織移行率(Rc)と血漿中蛋白結合率(fb)を算出した。Seizure(+)群とcontrol群ではintegration plotにより脳組織取り込みクリアランス(Ki)を求めた。痙攣発現とTPLの存在によるfluoresceinの蛋白結合率の変化は認められなかった。Seizure(+)群はcontrol群に比べて、Kiを有意に上昇させた。Fluorescein投与5分後においてseizure(+)群は、seizure(-)群やcontrol群と比べて、Rcを有意に上昇させた。また、seizure(-)群はcontrol群に比べて、Rcを有意に上昇させる傾向が見られた。薬物としてのTPLの存在の有無と比較して、痙攣発現の有無によるBBB透過性の上昇傾向のほうが強いものであった。以上の知見から痙攣発現がBBB透過性を上昇させる因子の一つであることが示唆された。また、同様のBBB透過性に関する検討を、薬剤誘発の急性腎障害モデルマウスでも行った。
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