本研究では、BBBの破綻を行動学的に評価する方法を確立して脳虚血疾患の病態を評価・解析するために薬物誘発性痙攣を用いた評価法を検討した。ラットに両側総頸動脈結紮並びに瀉血、再還流(6h)を行い、尾静脈からラニチジンを3.25mg/minで定速注入した。間代性痙攣が発現するまでの時間(Onset time)、薬物総投与量、痙攣発現時の血中Ranitidine濃度並びに脳組織中 Ranitidine濃度、見かけの脳組織移行率(Rc)を算出した。Sham群、再還流6時間病態群(2VO-6h)、MCI-186治療群(2VO-6h+MCI-186)、Sham+MCI-186群、再還流24時間病態群(2VO-24h)の5群を比較した。Sham+MCI-186群と比較して2VO-6h群のOnset Timeが有意に短縮した他(p<0.05)、Sham群との比較でも、短縮の傾向が見られたことから、脳血管障害によるBBB透過性亢進が、中枢神経系副作用の発現を高める事が示された。痙攣発現時の脳中Ranitidine濃度は、各群すべて濃度が等しく、Ranitidineに対する感受性が脳虚血障害により変化しないということが示された。痙攣発現時の血漿中Ranitidine濃度は、薬物の総投与量に依存した。痙攣発現時の脳組織移行率を示すRc値では、全ての群間で有意差は無かったものの、Sham群と比較して2VO-6h群のRc値の高い傾向が見られた。(pニ0.0517)MCI・-186の前投与による著明な治療効果は見られなかった。今回のモデルや方法に加えて他の虚血モデルやlntegration plot解析の容易な比較的痙攣が持続する薬物を使用する事により、新たな脳血障害の評価系を確立し、脳虚血障害研究を幅広く進めていく事ができると考えられる。
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