ラットにおいて、有機アニオンの一種であるスルホブロモフタレン(BSP)の肝取り込みに対して、免疫抑制薬シクロスポリン(CsA)が非可逆的に阻害することを既に明らかにしている。この現象について、昨年までの検討によって、Vmaxの低下によって生じていることを明らかにしていたが、さらに例数を追加した検討を行ったところ、Vmaxの変化ではなく、むしろKmの変化に大きく依存していることが明らかとなった。 また、OATPファミリーに属する各種有機アニオントランスポーターのmRNA発現量に変化が見られないことを既に明らかにしていたが細胞膜分画を単離して、これらの発現量をWestern blot法により解したところ、これにも変化が見られなかった。しかしながら、ここで得られた膜分画が必ずしも膜のみを純粋に単離しているとは言い切れないことから、このことによって膜上におけるトランスポーター発現量が変化しなかったという結論は得られないものと考えている。今後、さらなる検討を行いたい。 培養肝細胞において、あらかじめCsAを添加した条件で、BSP取り込み実験を行ったところ、取り込み機能の低下が認められ、この現象がin vivoだけでなく、培養肝細胞の系でも再現できることが明らかとなった。このことから、培養肝細胞もまた、実験系として用いることができることが明らかとなった。培養肝細胞および遊離肝細胞を用いて、トランスポーターにしてCsAが非可逆的に結合している可能性を考え、放射標識CsAを用いたbinding assayを行ったが、放射活性が低すぎたために、この現象を観察することはできなかった。 一方、ラットin vivoにおけるliver uptake index法により、肝取り込み機能を評価したところ、CsA投与から約3日後までは取り込み機能の低下が継続しており、約5日後には回復傾向が見られることが示された。このことについては、さらに例数を追加したいと考えている。 以上のように、肝取り込みトランスポーターに対する非可逆的阻害が起きていることを確認したものの、そのメカニズムを解明することはできておらず、今後の課題となっている。
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