1.ステロイド受容体認識配列(SRE)における遺伝的多様性の全ゲノム解析 ヒト全ゲノム中に点在するSREのうち、遺伝子コード領域内もしくは近傍に存在するものを抽出し、日本人500検体を対象として各SREにおける変異の有無を検討することにより、その存在頻度を明らかにすることを目的とした。そのため、申請者は以下の実験を行った。 ○ヒトゲノム全配列中に存在するSREをマッピングし、そのうち遺伝子コード領域内もしくは近傍に位置するものを抽出する。 ○各SRE特異的プライマーを設計し、ファルマスニップコンソーシアム(PSC)により樹立された日本人検体由来細胞株ゲノムDNAを対象として、PCR-SSCP法により塩基変異の有無を探索する。 ○塩基変異の存在が推定されたPCR産物の塩基配列を決定し、塩基変異の位置を同定する。 PCR-SSCP法により、抽出した各SRE(130箇所)上の変異の有無を探索したところ、12箇所の推定SRE上、もしくはその周辺領域に変異が存在していることが推測された。また、塩基変異の存在が推定されたSRE配列について塩基配列を決定し、塩基変異の位置を同定したところ、3箇所のSRE(TEAD1、NF-IC、NELL1遺伝子内もしくは遺伝子近傍)については実際にSRE中に塩基変異が存在していることを確認した。これらのうち、TEAD1、NF-ICは転写・シグナル伝達関連因子であり、NELL1は細胞増殖因子であることから、遺伝子発現においてこれらの因子の影響を受ける蛋白は多岐にわたる。これらの各SREの遺伝的多様性が各遺伝子の発現調節におよぼす影響を明らかにすることで、ステロイド剤に対する反応性における個人差を理解するための知見が得られると考えられた。
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