嚢胞性腎疾患は尿細管腔が拡大し嚢胞を生じる一群の疾患である。近年、尿細管上皮の一次繊毛が尿の流れを感知するセンサーとして機能し、尿細管構造維持に重要であることが示唆されている。我々が見出したinvマウスは、腎嚢胞形成を示す変異マウスであるが、inv蛋白質の機能は未解明である。本研究は、尿細管細胞の水流刺激感受機構を解析することから、管腔形態維持機構の解明を目指している。 正常およびinvマウス尿細管から単離した近位・集合管上皮初代培養細胞を実験に用いた。一次繊毛の観察はノマルスキー微分干渉顕微鏡下で行った。細胞に極微少な水流刺激を負荷したところ、一次繊毛のBending(曲がり)とともに細胞内Ca^<2+>濃度の顕著な上昇が検出された。一方で、細胞外液からCa^<2+>を除外すると、水流刺激に応じた細胞内Ca^<2+>濃度上昇は検出されなかった。これらの応答は正常およびinvマウス由来細胞間で差は見られなかった。また、外来inv-GFP遺伝子を発現させ、細胞内局在を調べたところ、水流刺激前後においてinv蛋白質は一次繊毛に局在し、他部位への移行は認められなかった。 本結果から、尿細管細胞へ水流刺激を負荷すると、細胞外からのCa^<2+>流入によりCa^<2+>濃度上昇が引き起こされることが明らかとなった。また、水流刺激の有無に係わらずinv蛋白質は一次繊毛に局在することから、inv蛋白質はCa^<2+>流入直後の一次繊毛において機能している可能性が強く示唆された。
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