研究概要 |
まず、本研究に適した分化条件を確定するために、N2aをRAあるいはdbcAMPで刺激後、12-96時間までのアセチルコリンおよびGABA作動性神経への分化を検討した。その結果、RA刺激の方が有意にコリン作動性神経への分化を促した。また、フェノタイプは刺激24時間までにほぼ決定されていたことから、以下の実験はRA刺激24時間後について検討した。次に、モックあるいはTe誘導性L3-RNAi安定性発現株(GFPを発現)を取得し、最もRNAi効率の高いクローンを選択した。得られたクローンを用いて、Te-on or-off制御下で、RA刺激によるアセチルコリン神経マーカー(ChAT,VAchT,p75)およびGABA神経マーカー(GABA,GAD65)陽性細胞への分化について検討を行った。RA刺激によるコリン有意な分化は、L3/Lhx8 KDによって有意に抑制された(図1)。 與味深いことに、この時にはGABA作動性神経分化が劇的に増加していた。また、RT-PCRを用いた場合においても同様の結果が得られたが、運動ニューロンのマーカーHB9に関しては、著明な変化は認められなかった。更に、この時のGABA作動性神経分化の上昇は、L3/Lhx8の強制発現により有意に抑制された。 以上の結果から、L3/Lhx8は、前脳基底部発達におけるアセチルコリン神経分化の促進に深く関与する事が強く示唆される。また同時に、L3/Lhx8がGABA作動性神経分化を抑制している可能性を産む結果も得られたことから、ES細胞等を用いたより詳細な検討と、更なるin vivoへの応用による検討が、今後の大きな課題である。
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