癌抑制遺伝子APC(adenomatous polyposis coli)は、細胞骨格である微小管に結合するタンパク質であり、主に腸管上皮細胞及び神経細胞における細胞骨格形成に関与している。実際、APCは微小管を束化する活性をもつことが明らかになっており、APCはこの活性を利用して細胞骨格の形態変化を引き起こし細胞の形を変化させる。平成17年度に、APCの微小管束化活性がMAGUK(membrane-associated guanylate kinase)ファミリータンパク質であるPSD(post synaptic density)-95との結合により促進されることを明らかにした。さらに平成18年度には、マウス脳からAPCに結合する脳特異的な因子EBF3-Sを生化学的な手法を用いて同定した。本年度は、APCとEBF3-Sの結合様式をin vitroで調べた。その結果、EBF3-SはAPCのC末領域(アミノ酸:2772-2843)を介して、直接結合することが明らかとなった。この領域はAPCの微小管束化活性領域に含まれ、かつPSD-95との結合領域にも隣接する。また、EBF3-Sも微小管に結合するタンパク質であることから、EBF3-SはAPCによる微小管の束化活性の調節メカニズムに何らか関与しているかもしれない。現在、in vitro及びin vivoの実験系を用いて、この可能性を探っているところである。
|