(1)DLG KOマウスでは、上皮性の管構造の形態形成が正常に進行しない傾向が見られていたが、今回さらに、消化管の形成にも異常があることを示す知見が得られた。 (2)DLG KOマウスにおける尿管の伸長不全の原因を追究するため、胎生12.5日の尿管上皮細胞の増殖率を比較したところ、KOマウスでは野生型に比べて細胞増殖率が低下していた。また腸管上皮細胞でDLGは、細胞間接着因子であるE-cadherinの細胞内局在を規定すると報告されているが、胎生期DLG KOマウスの尿管上皮細胞で、E-cadherinは野生型と同じ細胞の側壁部に局在していた。これらの結果は発生期の上皮細胞において、DLGが新規の分子機能を果たしていることを示唆するものである。 (3)これまでの研究で、出生直前の雌のDLG KOマウスにおける膣の無形成を明らかにしてきたが、今年度はその形態形成過程を詳細に解析した。発生過程の泌尿生殖器部分を抗Pax2抗体でホールマウント染色し、胎仔期の生殖管の詳細な形態観察を可能にした。この方法で野生型マウスにおける生殖管の発達過程を観察したところ、胎生14.5日までに下方に伸長した左右のミュラー管の下部が、胎生15.5日までに癒合することが示された。この膣の内腔は次第に下方へ拡大し、出生直前には子宮頸部と尿道の背面に観察される膣腔の上部へと発達していた。この過程をDLG遺伝子KOマウスで観察すると、ミュラー管の伸長が遅延しており、さらに左右のミュラー管がまったく癒合せず、左右ミュラー管の下端はいずれも盲端となって尿道上端付近の高さで閉塞していた。またこれらの組織切片を観察すると、KOマウスではミュラー管上皮周囲の結合組織の癒合も見られず、これらの組織を構成する細胞の性質や挙動が野生型マウスと著しく異なることが明らかになった。
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