研究課題
家族性低マグネシウム血症患者において、20種類以上のパラセリン-1変異体が報告されているが、変異体の発現がどのようなメカニズムでマグネシウム再吸収を阻害するのかは解明されていない。細胞内カルボキシ末端のPDZ結合領域にも変異の存在が確認されている。本研究では、パラセリン-1を強制発現した細胞を作成し、PDZ結合領域の役割を検討した。ラットの腎臓からパラセリン-1 cDNAを調製し、pCMV-Tag2Aベクターにサブクローニングした。このベクターをMDCK細胞にトランスフェクトし、G418を用いてパラセリン-1安定発現株を樹立した。さらに、site-directed mutagenesis kitを用いて、PDZ結合領域の点変異体を作製した。免疫沈降法と蛍光免疫染色法により、パラセリン-1はZO-1と結合し、タイトジャンクションに局在することが証明された。一方、パラセリン-1のPDZ結合領域に変異を導入した細胞では、ZO-1との結合は観察されず、パラセリン-1は側膜と細胞質に分布した。次に、パラセリン-1のマグネシウム輸送機能について検討した。細胞をトランスウェルに培養後、上皮膜間電気抵抗値の測定により、上皮膜バリアーの形成を確認した。管腔側の溶液にマグネシウムを添加し、血管側の溶液からマグネシウムを除去した。一定時間のインキュベーション後、血管側の溶液を採取し、マグネシウムキレート試薬XB-1を用いて輸送されたマグネシウム量を測定した。野生型パラセリン-1を発現した細胞では、発現しない細胞や変異型パラセリン-1を発現した細胞に比べて、マグネシウム輸送量が増加した。以上のことから、パラセリン-1のPDZ結合領域に変異がある場合、パラセリン-1がタイトジャンクションに分布できないために、腎臓におけるマグネシウム再吸収が低下すると示唆された。
すべて 2005
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Journal of Cellular Physiology 203・3
ページ: 471-478