研究課題
ヒトの胃癌由来細胞株であるMKN-28,-45は、低分化型(MKN-45)、中分化型(MKN-28)に分類されており、それぞれ細胞増殖速度が異なる。本研究では、細胞内Cl^-濃度の変化が細胞増殖速度を制御するという実験仮説に基づき、細胞内Cl^-イオン濃度に影響を与えるNa^+,K^+,2Cl^-cotransporter(NKCC1)の発現・活性レベル、およびNKCCの特異的阻害剤で処理した際の細胞増殖、および細胞周期に与える影響について、両細胞間での比較を行った。Realtime PCR法を用いて、NKCC1のmRNA発現レベルの比較を行ったところ、細胞増殖能の高いMKN-45では、MKN-28に比較して約3倍のNKCC1が発現していることが明らかになった。次いで、NKCC1のイオン輸送活性を、NKCC特異的な阻害剤であるfurosemideを処理した際の細胞容積変化から明らかにした。その結果、細胞容積減少量がMKN-45で大きかったため、mRNAレベルだけでなくNKCC1を介したイオン輸送活性もMKN-45の方が大きいことが明らかとなった。またNKCC1の細胞増殖への影響を検討するため、furosemideを処理した際の細胞増殖と細胞周期解析を行ったところ、MKN-45では、furosemide処理により有意な細胞増殖の阻害が確認できた。また、furosemideによる細胞周期に対する影響の解析を行ったところ、MKN-45ではコントロールと比較してGO/G1期細胞の割合が増加した。すなわち、MKN-45では、furosemide処理によるG0/G1 arrestが誘発されることが明らかとなった。以上の結果より、NKCC1が細胞増殖および細胞周期の進行に重要な役割を果たしていることが明らかとなったことから、細胞内Cl^-濃度変化が細胞増殖に影響を与える可能性が示唆された。
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