研究課題
本研究では、「生体単一細胞の生理機能分類」と「発現遺伝子に基づく細胞タイプの分類」とを対応づける手法の確立を目的とし、その第一段階として、生体DRGでの単一神経細胞の電気生理学的記録を試みた。平成19年度は以下の研究を実施した。1、生体ラットを用いたin vivoパッチクランプ法による単一DRG細胞応答の記録昨年度に引き続き、麻酔下ラット腰部脊髄後根神経節(DRG)からの単一感覚神経細胞の全細胞記録の確立を目指した。まず、皮膚を支配する神経細胞を他と区別して標識するために、実験に用いる動物の皮膚に蛍光色素DiIを注入し、逆行性標識に適した条件を決定した。これまでに百例に近い手術を行ない、座骨神経およびその末梢受容野との神経連絡を保ったまま腰部DRGを体外へ導出した標本の作成にはほぼ成功した。この標本を用いて、一昨年度に構築したin vivoパッチクランプ実験装置により、DRGからの全細胞記録方法を行うための手法と装置の改良を行った。このステップでは、昨年度、顕微鏡下での微細操作時にDRGからの赤血球の漏出による視野の悪化が最大の問題点であったため、酵素処理条件(酵素濃度、投与時間、投与圧、流速、酵素の回収方法等)と、出血の防止方法(血管収縮剤、止血剤等の添加)を検討した。血液凝固剤は血球の大きな凝集により視野を悪化させたが、血流を完全には抑えない程度の低容量のノルアドレナリンにより出血傾向は改善した。その他様々な改良により、微細操作の効率と細胞の状態が改善され、数例において神経細胞への良好な電極の接触(ギガシール)が可能であったが、安定して良好な細胞を得ることは難しく、神経活動の記録には到らなかった。2、培養DRG細胞での温度・機械応答の記録 および 発現する受容体のsingle cell RT-PCR解析上記において、単一細胞からの記録に成功しなかったため本解析は実施していない。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Neuroscience letters 434(3)
ページ: 277-281