研究課題
17年度では、消化管に直接脂肪酸を投与するモデルを作製することによって、GPR-120を介したGLP-1分泌性を検討した。8週齢雄性C57BL/6Jを麻酔下にて開腹し、十二指腸、回腸あるいは結腸部分にカニュレーションを施したモデルを作製した。試験物質として長鎖不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸(α-LA)、中鎖飽和脂肪酸オクタン酸(OA)を用い、それらの溶媒としてポリエチレングリコール400を用いた。100μl/minの速度で100nmol/g body weightとなるようカニュレーション部から投与した。15分後に門脈より採血を行い、血漿中のGLP-1およびインスリン含量を測定した。また消化管はホルマリン固定を行い、抗GLP-1および抗リン酸化ERK抗体にて免疫染色を行った。さらに2型糖尿病モデルであるNSYマウス(雄性40週齢)を用いて、脂肪酸を同様に投与し、門脈血におけるGLP-1およびインスリン含量を測定した。結腸へのα-LAの投与により、GLP-1及びインスリンの上昇が認められ、その作用はOAおよび溶媒のみの投与では認められなかった。α-LAのGLP-1分泌促進作用に付随し、結腸の内分泌組織での抗GLP-1陽性細胞におけるリン酸化ERKの上昇が確認された。さらに、結腸へのα-LA投与により、2型糖尿病モデルNSYマウスにおいて、血糖値の低下が認められた。結腸への活性脂肪酸α-LAの投与によりGLP-1分泌が惹起され、それに伴ってインスリン分泌が亢進することが示唆された。また、2型糖尿病においてはα-LAの投与により血糖の低下が認められた。長鎖不飽和脂肪酸の消化管への作用が、GLP-1分泌亢進しその結果として糖尿病改善に寄与する可能性が示唆された。18年度は脂肪酸およびその類縁化合物の栄養学的な応用に研究を進める。
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