暑熱負荷による核心温の上昇は、皮膚血管拡張神経活動を亢進し、神経終末からアセチルコリンや皮膚血管拡張物質を放出する。これらは直接血管を拡張させるだけでなく、一酸化窒素産生メカニズムに経由して一酸化窒素による血管拡張をも引き起こす。本年度は、この一酸化窒素が血管拡張時の皮膚血管収縮反応性に影響について以下の方法を用いて検討した。 健康な若年男性および女性、合計12名(予備実験含む)が、本研究に参加した。実験は、環境温度を23℃に設定した実験室内で実施した。実験の概要は、水循環スーツを用いて舌禍温が平均0.7℃上昇するまで加温(水温約50℃)した後、下肢陰圧装置を用いて起立性のストレスを負荷した。皮膚血管反応は、本年度購入したレーザードップラー血流計を用いて測定した。下肢陰圧負荷によって皮膚血管収縮反応が観察されるが、この皮膚血管収縮反応に対する一酸化窒素の影響を検討するために、本実験では皮内マイクロダイアリシス法を用いて一酸化窒素合成酵素阻害剤であるN^G-nitro-L-arginine methyl eater(L-NAME)をマイクロシリンジポンプで皮内に暑熱負荷前から連続的に投与した(対象部位にも皮内マイクロダイアリシスプローブを処置し、リンゲル液を注入した)。 本研究は、まだ実験継続中のため、現時点での結果から推察する限り、暑熱負荷によって増大した一酸化窒素による皮膚血管拡張が、起立性ストレス時の皮膚血管収縮反応に影響を及ぼす傾向がある。継続してデータを集積して、今秋の学会に報告する予定である。
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