研究概要 |
本年度は主として宇宙飛行したラットの組織を解析した。生後8日齢でスペースシャトルに搭載し、16日間宇宙飛行した幼若ラットの腎臓は水腎症様の腎孟拡張を示し、腎臓重量も宇宙飛行したラットでは大きくなっていた。また、AQP2、COX-1、Na^+-K^+-ATPaseの発現が減少していることを免疫染色で確認した。この腎盂拡張は地上帰還後30日を経てもなお確認することができ、地上帰還後30日後のラット腎臓でも、アクアポリン(AQP1,AQP2,AQP3)の発現が減少していることが確認された。さらにこれと関連して、帰還後の摂餌量と飲水量を算出した。帰還時に宇宙飛行したラットは体重が軽かったため、摂餌量は対照にくらべて若干少なかったが、逆に飲水量は多く、特に帰還後の比較的早い時期では24%も多かった。この多量の水分摂取行動は上記で示した水やイオンの再吸収に関わる分子の減少によって腎臓での尿濃縮能が低下した結果、引き起こされたものと思われる。また宇宙飛行ラットの尿管は、構造上大きな違いはなかったものの拡大しており、上部尿路での尿輸送が宇宙飛行中に滞っていた可能性が考えられた。以上の結果、幼若動物においては宇宙飛行中の尿輸送能の低下が水腎症や腎機能低下を引き起こすのではないかと示唆された。
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