脳による生殖内分泌調節の最終共通路は視床下部に存在する生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)ニューロンである。雌ではGnRHの特徴的なパルス状分泌や周期的な大量分泌が観察されるが、その制御機構は明らかになっていない。そのメカニズムとして、視床下部に散在するGnRHニューロンの活動が同期している可能性が考えられる。未熟動物の多くの脳部位において多数のニューロンが同調して活動するメカニズムとしてGABAの興奮性作用が注目されているが、GnRHニューロンにおいてもGABAが興奮性として作用していることを明らかにした。このことから、GnRHニューロンのautocrineのメカニズムにより、GnRHニューロンの活動依存的に、Cl^-を細胞外にくみ出すトランスポーターであるKCC2の発現を抑制し、GABAに対する反応を興奮性にしている可能性が考えられる。そこで、KCC2の発現をGnRHニューロンの株細胞であるGT1-7細胞を用いて、ウエスタンブロッティング、免疫染色法により調べたところ、KCC2の発現はみられなかった。また、GT1-7細胞にKCC2を強制発現させたところ、GABAの作用は抑制性に変化した。KCC2の発現制御機構については、海馬のニューロンを用いた実験で、神経活動依存的に、数時間でKCC2のチロシンキナーゼリン酸化サイトの脱リン酸化が起こり、機能が激減することを明らかにしている。現在、GnRHニューロンを用いて、GnRHの合成阻害やGnRHニューロンの活動性抑制によるCa^<2+>オシレーションの同期の変化やKCC2の発現の変化を検討中である。また、in vivoでGnRHニューロンにKCC2をレンチウイルスを用いて強制発現させ、性周期への影響を調べている。
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