前年度までに選択・作製したオーファンGPCRとルシフェラーゼの融合タンパク質をコードするプラスミドを用いた検討をさらに進めた。対象とする融合タンパク質を培養動物細胞に一過性に導入、発現させる過程で、細胞膜表面への発現が低い受容体が数種あった。これらについては7回膜貫通タンパク質であってもGPCRではなく、他の機能を持つ分子である可能性が想定された。オーファン受容体とルシフェラーゼの融合タンパク質がBRET(生体発光共鳴エネルギー転移)の系におけるエネルギードナー分子として機能するためには、一定の発現量がないとアクセプタ分子へのエネルギー転移量が不十分となり、実際には分子会合が起こっているにも関わらず、その分子会合を検出できない可能性がある。このため、ウエスタンブロットなどを用いて低発現型受容体の遺伝子導入条件を検討した。 また、BRETが確認された受容体に関しては、偽陽性を排除するための条件についても検討をおこなった。具体的には、一次スクリーニングでBRET陽性であった受容体のドナー・アクセプタ比を連続的に変化させてBRET値をプロットしていき、対数関数的なBRETシグナル上昇であることを確認できれば特異的BRETと判断した。そのためのドナーおよびアクセプタの発現量や量比についての検討をおこなった。今後は、得られた知見を基にリガンド同定やGPCRの二量体化・多量体化の意義について研究を進める予定である。
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