<研究目的> 蛋白質のポリユビキチン化は、プロテアソームによる分解のシグナルとして機能し、様々な生命現象の調節に重要な役割を果たしている。しかしながら、ユビキチン化を受ける基質蛋白質の同定、更に様々な刺激によるユビキチン化の変動は限られた例についてしか明らかにされていない。またユビキチン化分子マシナリーの解明は進んだものの、基質特異性を担う各種ユビキチンリガーゼE3と基質との対応関係も明らかにされているものは限られている。そこで、私は独自開発のポリユビキチン化蛋白質濃縮法であるPAP法に安定同位体ラベリングとLC-MS/MS解析とを組み合わせる事により、異なる細胞状態間でのポリユビキチン化基質蛋白質の相対量を比較プロファイリングし、その生物学的意義(E3と基質との対応関係等)を明らかにする事を目的とした。 <実験結果> 本年度はポリユビキチン化基質比較プロファイリングを用いたE3の基質探索に注力し、SCF型E3の構成因子であるF-box蛋白質の一種でその変異がミトコンドリアの形態異常を引き起こすMdm30pの特異的な基質候補としてミトコンドリア外膜蛋白質Mdm34pを同定した。現在はこの「E3-基質」を実証すべく、様々な観点から検証作業を行っており、Mdm30p-Mdm34p間に遺伝的、物理的相互作用を認め、Mdm34pの強制的なユビキチン化により、Mdm30p欠損によるミトコンドリア形態異常が部分的に回復する事も確認した。 異なる細胞状態間でのポリユビキチン化基質蛋白質の相対量比較プロファイリングに関してはまだ準備段階であり、LC-MS/MSの二次元化も視野に入れ検討している。
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