細胞間の物質の透過は、上皮細胞の細胞間結合であるタイトジャンクションや腎臓糸球体上皮細胞ポドサイトの特殊な細胞間結合であるスリット膜に局在する細胞接着分子によって制御されていると考えられている。実際、タイトジャンクションやスリット膜に局在する細胞接着分子の異常は低マグネシウム血症やネフローゼ症候群などの透過性異常を招く。私はタイトジャンクションに局在する細胞膜裏打ち分子MAGI-1に結合する分子として細胞接着分子JAM4を見い出しており、これらの分子が細胞間の物質の透過性制御にどのように関わるかに関心をもって解析を行ってきた。JAM4はMAGI-1とともに腸管のタイトジャンクションや腎臓糸球体のスリット膜に局在している。また、細胞にJAM4を発現させると、細胞間の物質の透過性が抑制され、MAGI-1共発現により透過性の抑制効果が増強されたことから、JAM4はMAGI-1と協調して細胞間の物質の透過性制御に関わると考えられている。 今年度は、細胞膜裏打ち分子MAGI-1に結合する分子として、新たに細胞接着分子ネフリンを同定した。ネフリンは腎臓糸球体のスリット膜に特異的に局在し、その異常は先天性ネフローゼの原因であることが知られている。JAM4とネフリンはそれぞれの細胞内PDZ結合モチーフを介してMAGI-1の異なるPDZ領域と結合し、三者はポドサイトのスリット膜において分子複合体を形成することが明らかとなった。また、JAM4欠損により腸管や腎臓糸球体の物質の透過性にどのような変化が生じるかを検討するため、JAM4ノックアウトマウスの作製を進行している。
|